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「環境報告書発行企業の意識調査」 ~ 6割がインターネット上で公開、英語版作成は4割。
課題は、発行企業と読者とのギャップの解消、費用対効果の向上~

平成13年12月26日

(報道発表資料)

株式会社NTTエックス

株式会社三菱総合研究所

gooリサーチ結果(No.35)

「環境報告書発行企業の意識調査」
~ 6割がインターネット上で公開、英語版作成は4割。
課題は、発行企業と読者とのギャップの解消、費用対効果の向上~

 NTT-X(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:池田 茂)と、株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、取締役社長:谷野 剛)は、平成13年11月15日(木)から19日(月)まで、2社が共同で提供しているインターネット・アンケートサービス「gooリサーチ」(*1) の自主調査として、企業で環境関連業務に従事している担当者を対象に『環境報告書(*2) 発行企業の意識調査』を実施しました。
 今回発表するリサーチ結果は、「gooリサーチ結果(No.33)『環境報告書に関する、生活者2万人の意識調査』結果」(*3、平成13年12月14日発表)を補完するものであり、”環境報告書を発行する側の企業と読者側の消費者に対して同じ質問をし、その結果を比較する”という今回の試みは、世界でも例を見ないものと言えます。

<調査概要>

1.調査方法:「gooリサーチ・モニター」(*4)への登録者のうち、企業で環境関連業務に従事している担当者を対象とした 非公開型インターネット・アンケート。
2.調査期間:平成13年11月15日(木)~11月19日(月)
3.総回答者数:508名
4.調査企画・協力:後藤敏彦氏(*5、環境監査研究会・NER代表幹事)、環境goo(*6) 他
※詳しい調査結果はこちら

調査結果について(要旨)

 本調査により、環境報告書の発行者である企業と、読者である一般消費者との意識のギャップが明らかになり、環境報告書発行企業の今後の課題が浮き彫りとなった。
 現状では、環境報告書を発行する企業の6割がインターネットを通じて環境報告書を発行し、4割が英語版の環境報告書を印刷している。環境報告書発行企業がグローバル化し、ステークスホルダー(利害関係者)に積極的に環境報告書を公開している姿勢がうかがえた。
 環境報告書発行企業は、その6割が「自社やグループ企業の従業員を読者として想定」しており、「一般消費者を読者として想定」の4割を上回っている(調査結果のポイント 3(1))。しかしながら、gooリサーチ結果(No.33)『環境報告書に関する、生活者2万人の意識調査』結果によると、一般消費者層における環境報告書の認知率は6割、環境報告書に関心をもつ層が9割と高くなっており、各企業が一般消費者を読者の対象として考える必要性は高まってきていると言える。
 環境報告書の発行目的は、「広報・宣伝のツール」とする割合(54%)が「消費者を含むステークスホルダーのコミュニケーションツール」とする割合(45%)を上回っている(調査結果のポイント 2(2))。現時点では環境報告書発行企業の中で、読者側のニーズを積極的に捉えようとする割合が少ないことが判明した。さらに、約半数の環境報告書発行企業が、環境報告書の発行時における「コスト負担」「効果が不明」「作業負担が大きい」等の問題点を挙げている(調査結果のポイント 2(3))。
 gooリサーチ結果(No.33)では「トヨタ」や「ソニー」の環境報告書が一般消費者に良い印象を与えていた。高い評価をされている理由が「わかりやすさ」「具体性」「客観性の高さ」であったことより、一般消費者を読者と定義し、コミュニケーションを円滑に行うことを前提とした環境報告書作成の重要性がわかる。
 環境報告書発行企業は、「誰に環境報告書を読んでもらうべきか」「環境報告書を作成することで何を伝え、どんな効果を得るべきか」といった観点で発行目的を再度確認し、読者とのギャップを埋め、費用対効果を向上することが今後の課題である。
 本調査については、「環境報告書シンポジウム」(*7)の中でも分析途中の概略が紹介されたが、その中で本調査の企画・設計に参加した後藤敏彦氏は以下の様にコメントしている。
 「環境報告書を発行する側の企業と読者側の消費者に対して同じ質問をし、その結果を比較する今回の試みは、世界でも例をみないものである。本調査結果の中で、環境報告書を発行する企業が情報発信の方法としてインターネットを活用していることと、英語版の環境報告書を発行する企業が増加しているという指摘があったが、現実にはまだWeb上で環境報告書をさがすのに苦労する。発行者側である企業の課題としては、企業の環境保全活動全般の信頼性を増すために、いかに環境報告書をツールとして活用し、読者との双方向コミュニケーションを高めるかにある。」

調査結果のポイント

1.企業の環境活動の現状
(1)環境に関するコミュニケーション活動
 企業が積極的に実行している環境コミュニケーション活動で、最も多いのは「自社社員への教育研修実施」(46%)であり、次に「社内報で環境コラム等の掲載」(33%)が多く、社内向けのコミュニケーションに各企業が注力していることがわかる。社外ステークスホルダー向けのコミュニケーションである「インターネットを使った環境情報伝達」(30%)、「商品パンフレットへの環境品質情報記載」(30%)等の活動が挙げられる割合は、社内向けのコミュニケーションよりも少ない。
(2)環境ISO(*8)への取り組み
 いわゆる環境ISOと呼ばれるISO14000シリーズをすでに取得している企業(事業所)は約3割(27%)であり、17%の企業が取得を予定している。
(3)環境会計開示の目的
 環境会計を開示している企業に、その目的を聞いてみた。広報・宣伝の目的である「企業イメージの向上」が3割(32%)で、環境会計開示の本来の目的と考えられる「具体的な環境活動の説明」(20%)や「株主や投資家へのIR情報提供」(11%)をうわまわっている。
2.環境報告書の現状
(1)環境報告書発行の現状
 環境報告書を発行している企業は回答企業の2割(22%)である。環境ISOの取得率(27%)と比較すると少ないが、検討中の企業を含めると、約5割(52%)の企業が発行への取り組みを行っている。
 また、発行の方法については、環境報告書発行企業の6割(63%)がインターネット上で環境報告書を開示、そのうち16%はインターネット上のみの開示である。
(2)発行の目的
 環境報告書発行企業の約9割が「アカウンタビリティ(企業活動説明責任)のツールとして」(86%)環境報告書を発行しているが、ここでも、「広報・宣伝のツールとして」(54%)という回答が、ステークスホルダーへの「コミュニケーションツールとして」(45%)という回答を上回っている。現時点における環境報告書の発行や環境会計の開示は、消費者の便益のための活動というよりも、企業イメージを向上させるためというような、自らの便益のための活動といった側面が大きい。
(3)問題点
 環境報告書を発行する上での問題点を聞いてみた。約5割は「コスト負担が大きい」(47%)と回答している。「効果がよく分からない」(44%)、「作業的な負担が大きい」(35%)という回答も多く、費用対効果について疑問視する環境報告書発行企業が多い。
(4)グローバル化について
 環境報告書発行企業で、印刷物を作成している企業のうち、英語版でも印刷物を発行している企業は約4割(44%)であり、海外のステークスホルダーへ環境保全活動を開示するグローバル企業の割合が高い。
3.発行者(企業)と読者(企業)のギャップ
(1)発行者が想定する読者層
 環境報告書発行企業と発行予定企業の6割が、「自社・グループ企業の従業員」(59%)を読者として想定しており、次に「取引先」(52%)、「投資家や投資機関の担当者」(46%)となっている。一方、「一般の消費者」(40%)「株主」(39%)の割合は約4割と低く、環境報告書発行企業が想定する読者層は、企業側により近い立場にいる狭義のステークスホルダーに絞り込まれている。12月14日(金)発表の調査で、「専門的な内容になりがちで、難解」という声が一般消費者の間で多かったことも以上の点から理解できる。
(2)環境報告書に読者が求める情報ニーズと企業が想定する情報ニーズのギャップ
 12月14日(金)発表の調査(gooリサーチ結果(No.33))で、読者側の一般消費者に環境報告書にもとめる情報について尋ねたが、今回の調査では企業側にも同じ質問をして、回答内容を比較した。企業側が考える消費者のニーズと現実の消費者側とのニーズがマッチしているのは「環境に関する方針、目標、計画」であった。「経営者の環境に対する考え方」に対するニーズは消費者49%、企業側64%と差があるものの、双方とも高い割合である。ニーズ間のギャップが比較的大きいものは、「環境ISOの認証取得状況」「グリーン購入・調達の状況」であった。企業側が取引先企業やグループ会社など、自分達に近い立場にいるステークスホルダーに対してアピールしたい「環境ISOの取得」や「グリーン購入」という取り組みは、一般消費者にはあまり理解・評価されていないことが理由として考えられる。
(3)環境報告書の問題点に対する読者と企業の認識のギャップ
 12月14日(金)発表の調査(gooリサーチ結果(No.33))で、一般消費者で環境報告書を読んだことのある層に、環境報告書の問題点について尋ねたが、今回の調査では企業側にも同じ質問をして、回答内容を比較した。「内容・書式が違い企業間比較が出来ない」という問題意識は消費者側60%、企業側54%と、お互いに共有されているものの、「良い事ばかりで客観的でない」という問題意識は消費者側54%、企業側25%と大きな開きがある。
(4)読者とのギャップ解消への取り組み
 環境報告書発行企業に対して、自由回答で読者ニーズを把握し、環境報告書に反映する為に行っている努力について尋ねたところ、「読者や消費者へのアンケート調査」を実施している企業がもっとも多かった。「他社の環境報告書」を参考にしている企業や、「なるべくわかりやすい言葉やイラストを使用する」、「具体的事例を盛り込む」「コンサルタントや専門家に相談する」等の努力も挙げられている。中には、「環境報告書は自社・グループ会社社員教育目的に作っているので、ギャップ解消は不要」という回答も挙げられた。
以上
《 補足 》
(*1)【 gooリサーチ 】http://research.goo.ne.jp/
 ポータルサイト「goo」を運営するNTT-XのWEBマーケティングノウハウと、日本のリーディングシンクタンクである三菱総研の調査企画力、コンサルティング力が融合した、高品質で付加価値の高いeリサーチ・サービスです。現在、モニター数13万人(平成13年12月現在)。消費者向け調査から、法人向け調査、グループインタビューまで、調査目的に合わせてお選びいただける様々なリサーチ・ソリューションを提供しています。
(*2) 【 環境報告書 】
 企業等の団体が、自主的に自らの企業活動が与える環境への負荷を把握・評価し、環境保全活動全般への取り組みとその結果を取りまとめ、ステークスホルダーに情報公開するためのレポート。2001年2月に環境省が「環境報告書ガイドライン」を公表するなど、環境報告書を発行する企業は益々増加してきている。
(*3) 【 環境報告書に関する、生活者2万人の意識調査 】
 NTT-Xと三菱総合研究所が「goo」上で、2001年10月24日から11月11日の間に実施した、一般消費者に対する環境報告書の意識調査。有効回答者数は23,636名。一般消費者の5割は「企業の環境活動を知る上で、環境報告書は有効」と評価していること、消費者に評価される為の発行側の課題は環境報告書の「客観性」「わかりやすさ」であること等が判明。
 報道発表文は(http://www.goo.ne.jp/help/info/n_release/n_011214.html)をご覧下さい。
(*4) 【 gooリサーチ・モニター 】
 「gooリサーチ・モニター」とは、gooのなかのリサーチ・サービス「gooリサーチ」のアンケートモニターです。現在、登録モニター数13万人。登録されているモニターの属性数は、約40以上で、出現頻度の低い対象者向け調査にも幅広く対応可能となっております。「gooリサーチ」では、携帯電話を利用してアンケートに回答する「gooリサーチ・モバイル」モニター(2.7万人)から、支出決定権限を有するビジネスマンを中心として、企業向けアンケートに回答する「gooリサーチ・ビジネス」モニター(5100人)も擁し、様々な市場調査ニーズに対応しております。(モニターの人数はいずれも平成13年12月現在)
(*5) 【 後藤敏彦氏(環境監査研究会・NER代表幹事)経歴 】
 環境監査研究会代表幹事。NER(環境報告書ネットワーク)代表幹事。GRI運営委員、環境レポート大賞審査委員会委員、環境管理規格審議委員会SC4小委委員・WG4エキスパート、東洋経済・GRFグリーンリポーティングアワード審査委員、政府「化学物質と環境円卓会議」メンバー等、日本における環境報告書普及に尽力。
(*6) 【 環境goo 】http://eco.goo.ne.jp/
 gooのなかの”環境”専門サイトである「環境goo」は、平成11年8月の開設以来、企業からコンシューマまで、あらゆるユーザの環境情報ニーズに対応しており、今や”国内最大の「環境情報のポータルサイト」”として、ユーザの皆様の評価が定着しています。アクセス数は約300万ページビュー/月、メールサービスの会員数は約80,000人。
(*7) 【 環境報告書シンポジウム 】
 環境goo、凸版印刷株式会社、日経エコロジー/日経BP環境経営フォーラムの主催により、2001年12月13日(木)、東京ビッグサイトにて開催された。これからの時代に求められる「環境報告書」と、企業の「環境コミュニケーション」のあり方について、「環境コミュニケーションがひらく新社会ステージ」というテーマに基づき、活発な議論がかわされた。シンポジウムの内容は平成14年1月16日(水)に、「環境goo」で紹介する予定。
(*8) 【 環境ISO 】
 企業が、地球環境に配慮した事業活動を行うために、国際標準化機構(ISO)が作成した国際規格で、ISO4000シリーズと呼ばれる。公害対策のように決められた基準値を守ればよいといったものではなく、企業が環境に対する負荷を減らしていくための努力目標を設定し、そのための人材教育やシステム構築を行った結果を認証機関が認定する。最近では、企業だけでなく自治体などでも環境ISOを取得しようという動きが急増しており、新潟県上越市、千葉県白井町などがすでに認証を得ている。