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gooリサーチ結果(No.27) 法政大学小川孔輔研究室との共同調査 「1万人のインターネット ショッピング意向調査」 ~利用体験者による生の声「おすすめ情報」は他の消費者の利用意向を高める~

平成13年6月5日

法政大学小川孔輔研究室

株式会社エヌ・ティ・ティ エックス

株式会社三菱総合研究所

gooリサーチ結果(No.27) 法政大学小川孔輔研究室との共同調査
「1万人のインターネット ショッピング意向調査」
~利用体験者による生の声「おすすめ情報」は他の消費者の利用意向を高める~

  株式会社エヌ・ティ・ティ エックス(東京都千代田区大手町1-6-1、代表取締役社長 池田 茂)と、株式会社三菱総合研究所(東京都千代田区大手町2-3-6、取締役社長 谷野 剛)は、2000年9月29日から10月16日まで、法政大学経営学部・小川研究室(東京都千代田区富士見 2-17-1 経営学部教授 小川孔輔)と共同で、「gooリサーチ」「gooショップ」(現在は「gooショッピング」)上において、一般参加型のインターネット・アンケートを実施しました。有効回答者数は13,822名でした。

【調査概要】 

《調査方法》

gooリサーチ、gooショップ・ホームページ上での公開型インターネット・アンケート。
 http://research.goo.ne.jp/(gooリサーチ)
 http://shop.goo.ne.jp/(gooショップ)※現在は「gooショッピング」

《調査期間》

  実施時期:2000年9月29日~10月16日

《回収数》

  総回答者数:13,822名

【調査結果のポイント】 

《調査の目的》

  「amazon.com」(http://www.amazon.com/)や、「旅の窓」(http://www.mytrip.net/)といった、実際に商品・サービスを購入・利用した人々の評価情報を掲載しているホームページがインターネットユーザーの人気を博している。
  本調査では、インターネットショッピングにおいて、消費者が発信する生の体験談「おすすめ情報」が消費者の購買行動に与える影響について調査した。

発見1.
  消費者は、インターネットショッピングにおいて、ショップによる「おすすめ情報」よりも利用者による生の声である「おすすめ情報」を重視する。

  6つの商品・サービス(英国製ポロシャツ、薄型ヘルスメーター、ペルシャ風カーペット、新発売の推理小説、メキシコのホテル、新作インド映画)を取り上げ、購入時に、客観的ではあるが情報の信頼性が不明確な「利用体験者の評判・おすすめ」情報と、主観的に見られがちな「ショップのおすすめ」情報のどちらを重視するかを尋ね、比較した。
  結果、「メキシコのホテル」において「利用体験者の評判・おすすめ」を選択した割合が41%で、「ショップのおすすめ」を選択した割合が6%と大きな差異が見られたのをはじめとして、残りの5つの商品・サービスにおいても、「利用体験者の評判・おすすめ」が「ショップのおすすめ」を上回っており、インターネットショッピングにおいては、消費者はサイト運営側による「おすすめ情報」よりも、利用者による「おすすめ情報」を重視している。

発見2.
  商品・サービスの体験者による「おすすめ情報」をショッピングサイト上に提示することにより、他の消費者の利用意向を高めることが出来る。

  4つの商品・サービス(インド映画、ポロシャツ、漫画、電気カーペット)において、それぞれの商品に利用意向を持った人、持たなかった人との間で利用体験者による「おすすめ情報」の評価に差異があったかを比較した。
  結果、すべての商品・サービスにおいて、利用意向を持った人の「おすすめ情報」への評価は、利用意向を持たない人の「おすすめ情報」への評価よりも高く評価されていた。これにより、ショッピングサイト運営者は、利用体験者による商品・サービスの「おすすめ情報」をサイト上に提示することで、ユーザーの利用意向を高める効果を得られることが予想される。

発見3.
  経験情報が重視される「経験財」の購買行動においては、価格が最重視されると思われがちなインターネット上においても、生の体験情報「おすすめ情報」や体験版データの利用が価格よりも重要視される。

  一般的に、経験情報が重視される商品・サービスは「経験財」、属性情報が重視される商品は「探索財」と定義されるが、それらの財をインターネットで購入する場合に、「消費者が最も重視する」と回答した情報の割合を比較した。
  結果、「探索財」において属性情報(値段、製品の機能、材料、製品デザイン、大きさ等)を重視する消費者の割合は約9割であったが、「経験財」において経験情報(有名人・批評家等の評価、利用体験者の評判・お勧め、ショップのお勧め、体験版利用等)を重視する割合は8割以上であり、商品・サービスによってそれぞれ消費者が注目する情報に違いが有ること、経験財の購買行動においては「おすすめ情報」を含む「経験情報」が、探索財の購買行動においては「属性情報」がインターネット上でも重視されることが判明した。
  注目されるのは、インターネットユーザーは価格の安さを必ずしも全ての購買行動の決定要因としているのではなく、商品・サービスによって彼らが購買行動の決定要因とする情報は異なるということであり、その要因はリアルにおける購買行動と同じ、ということである。

発見4.
  インターネット世界の特異性としてハンドルネームに代表される「匿名性」があげられるが、商品・サービスの「おすすめ情報」を提示する場合は、ハンドルネーム等の匿名による発言であっても信憑性が大きく低下することはない。

  回答者を2つのグループに分け、同一の「おすすめ情報」を一方のグループには実名で提示し、もう一方のグループには匿名で提示し、グループ間における信憑性の評価を比較した。
  結果として、実名で「おすすめ情報」を提示したグループにおいては、匿名で「おすすめ情報」を提示したグループと比較して、情報の信憑性に対する評価が若干高いことが確認されたが、評価平均値に関しては大きな変化は見られず、インターネット利用者が「おすすめ情報」を入手する場合に、実名と匿名の差異にはあまり注目していないことが確認された。

《小川教授のコメント》

  友人・知人による口コミ情報は、オフライン(リアルの世界)のマーケティング戦略において、消費者の購買意思決定に大きく影響を与える情報であるとされてきた。本調査により、オンライン(インターネットの世界)のマーケティング戦略においても、消費者の生の声「おすすめ情報」は非常に重要であり、利用意向を高めることが発見された。これは、オンラインの世界では、顔の見えない消費者の声が、オフラインの世界の仲間による口コミ情報と同じレベルの信憑性、評価を受けている証拠である。興味深いのは、発見4で見られた様に、実名と匿名の情報の信憑性に、差異があまり無かった点である。つまり、インターネットの利用経験が豊かな消費者の場合、「おすすめ情報」が顔の見えない(匿名の)消費者により発せられていた場合でも、その情報の信憑性を自ら評価する能力をもっていると言えるのではないか。
  これらの「おすすめ情報」が重視される「経験財」とは、生で体験者の感動が伝わった方が良いサービス財や、映画・本・音楽等の情報財である。「旅の窓口」といった旅行情報が掲載されているサイトを例にとると、そこでの掲示板の情報を見るのは、事前に旅館の宿帳を見ることが出来るのと同じである。つまり、サービス未体験の消費者が、利用体験者の生の感動、体験談をインターネット上で事前に見ることが出来るのである。

【小川孔輔教授】 

法政大学経営学部 小川孔輔教授について
  1951年、秋田県生まれ。74年東京大学経済学部卒業。86年から法政大学経営学部教授に就任、現在に至る。研究関連分野として、マーケティング、マーケティング・リサーチ、ブランド・マネジメント、マーケティング情報システム、環境創造ビジネス他。
<学会/協会活動>
  「日本マーケティング・サイエンス学会」常任理事、NPO「日本フローラルマーケティング協会」会長、Abstract Editor (Asian Region : International Journal of Research in Marketing)
<連載>
  「続・当世ブランド物語」『チェーンストア・エイジ』(ダイヤモンド・フリドーマン社)
  「ガーデニング流通」『グリーン情報』(グリーン情報)
<出版物・既刊>
  1999. 1. 『当世ブランド物語』誠文堂新光社
  1999.10. 『マーケティング情報革命』有斐閣(テレコム奨励賞2001年受賞)
  2000. 3. 『グローサリー・レボリューション』(翻訳:バーバラ・E. カーン他)同文館
  2000. 9. 『ガーデニング流通』グリーン情報
  2000. 12.『シリーズ マーケティング・エンジニアリング』(編著)朝倉書店
<出版物・予定>
  2001. 7. 『よくわかるブランド戦略』日本実業出版社
  2001. 9. 『ブランド・マネジメント』(編著)同文館